夢八十五夜

 夢を見た。



父親が急斜面に立っている。

とんでもなく急な斜面だ。80度くらい?

夕方、西日を浴びてとても精悍な顔つきをしている。

他にも観光客らしき人がチラホラ。


そんな父親を少し離れたところから見ていたら、父親は走り出した。

急な斜面を。

見てすぐ、滑り落ちそうになりそれを回避するために走り出したことは理解できた。

しかし、無情にもあっという間に(本当にあっという間に)落ちていった。

俺は悲鳴をあげながら下を覗き込む。

遥か下の地面には父親が倒れている。

すると、父親はモゾモゾと両手を後ろに回した。


ピンときた。

これは「大丈夫」のサイン。


俺は命が助かっていることに安心しながらも、急いで斜面についている階段を駆け下りていた。

最近じゃあ父親のことをあまり呼ばないが、「お父さん」と叫びながら。